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今週の土曜日(9月28日)で、今年のニュージーランド(以下、NZ)国内でのオールブラックスの試合は見納めとなる。
キーポジションの変更を含め、メンバーの中には、今季限りでNZから去るサム・ケイン(FL)、TJ・ペレナラ(SH)の名前も入っている事から、NZ国内のメディア、ラグビーファンの注目度は高い。
9月21日におこなわれた、ザ・ラグビーチャンピオンシップ(以下、TRC)の第5節。オールブラックスがワラビーズを31-28のスコアで勝利した事により、2戦目を待たずに今年もオールブラックスがブレディスローカップを保持した。
ニュージーランド(以下、NZ)国内においてブレディスローカップは、ワールドカップの次に大事なカップの位置付けとなっている。2003年に奪取して以来22年連続の保持となった事は喜ばしいが、試合内容はオールブラックスにとって称賛されるものではなかった。
序盤から勢いがあったオールブラックスがファーストクォータであっさりと3トライ奪い21-0で圧倒していた。しかし、この試合でもオールブラックスがファイナルクォーターで規律を乱した。2枚のイエローカードを貰い数的不利になった事がワラビーズに追い上げられ、結果的に3点差まで詰め寄られた。
試合後、ピッチの上でSky TVのインタビューに答えたアーディー・サヴェアに笑顔はなく、厳しい表情だったことが印象的だった。
対照的に、敗れたにもかかわらずワラビーズのキャプテンNO8ハリー・ウイルソンは、試合後のインタビューで笑顔を見せた。一時は21点のビハインドから、後半に巻き返して勝利目前まで言った事を称賛していた。前説のアルゼンチンとの大敗から立ち直るきっかけを得たと言えるかもしれない。これが今週の試合にどう影響するか。
この結果に、NZ国内のメディアやラグビーファンは当然のことながらも苦言を呈した。特にファイナルクォーターの失点と得点力のなさが3試合連続で続いていることを懸念している。
◆ボーデン・バレット、2年ぶりに10番ジャージ。
9月28日のTRC最終節、オールブラックス×ワラビーズのブレディスローカップ第2戦は、NZの首都ウエリントンにあるスカイスタジアムが舞台だ(キックオフNZ時間19:05、日本時間16:05)。
その試合に挑むオールブラックスのメンバーが9月26日に発表された。
前節の勝利で今年もブレディスローカップを確保した事から、若手に経験を積ませるセレクションの声も少なくなかった。しかしヘッドコーチ(以下、HC)のスコット・ロバートソンをはじめ、セレクター陣が選んだメンバーは前節から先発メンバーの変更は3人と大幅な変更はなかった。
今回のセレクションで最も話題になったのは司令塔のポジションだ。今季これまで全8試合で背番号10を任せていたダミアン・マッケンジーをベンチに置き、ボーデン・バレットが約2年ぶりに10番を着る。
前節、体調不良で急遽試合を欠場したボーデンだが、本人は10番のジャージを希望していた。また、NZ国内でもそれを待ち望む声は多かっただけに注目される。
この変更についてロバートソンHCは、「我々は常にボーデンを(10番で)起用する計画を立てていた。マッケンジーは今シーズン、すべてのテスト(試合)に先発してきた。チームに厚みを持たせる機会を選手たちに与えなければならない」と話した。
北半球遠征に向け、ボーデンの司令塔としての役割も期待しているようだ。
ロバートソンHCの、マッケンジーへの高い評価も変わらない。「ダミアンはベンチから重要な役割を果たすことができる」と語り、「マッケンジーは、これまでボーデンのように、ファーストファイブ(SO)とフルバック(FB)の両方で経験豊富なカバーができる」と続けた。
前節はベンチスタートだったTJ・ペレナラは、コルティス・ラティマと入れ替わる形で先発に昇格し、背番号9を付ける。
前節ヒザの負傷をしたジョーディー・バレットの代わりにアントン・レイナートブラウンが入って12番を付け、リーコ・イオアネとCTBコンビを組む。
先発メンバーの変更はBKの3人のみ。FWの先発メンバーの変更は無い。
南アフリカ相手に、初先発ながら印象的な活躍を見せたウォレス・シティティは、前節のワラビーズ戦でも持ち味のボールキャリーだけでなく、仕事量の多さも見せた。結果、3試合連続で背番号6を付けて先発出場する。
前節、試合直前にWTB(14番)からFBに変更となったウィル・ジョーダンは、スーパーラグビーで見せているような自由自在のランを披露した。今回の試合でも15番で起用される。2試合続けてFBとして良いパフォーマンスができれば、この先ジョーダン15番定着も十分に考えられる。
ベンチに目を向けると7月のイングランド戦以降、ケガに泣かされてきたブルーズの主将、LOパトリック・トゥイプロトゥが久しぶりにメンバー入りした。19番を付けてベンチスタートとなる。
PRパシリオ・トシが2試合連続でベンチ入りしている。この試合ではもっと多くのプレータイム(前節は10分未満)でインパクトのあるボールキャリーを見せられるか。引き続き注目したい。
今季初登場のユーティリティーバックスのデイヴィッド・ハヴィリが23番を付けてベンチ入りした事も話題となった。
今季新人で本格派CTBのビリー・プロクター(フィジー戦の初キャップのみ)の起用を期待する声もたくさん出ていたが、ホーム最終戦でも彼の名前がなかった事は、ジョーディー(バレット)のケガで12番を任すことができる選手が、レイナートブラウンしかいないことが理由のようだ。SH以外どこでもこなすハヴィリを今回ベンチ入りにさせたようだ。
◆レジェンド2人、ホームでの最後のテストマッチ。必ず勝利を。
前主将のFLサム・ケインは20歳でテストマッチデビューしてから、この試合でオールブラックス13人目の100キャップ選手となる。首の大ケガをはじめ、多くのケガに泣かされてきた男が大きな足跡を残す。
ケインと共に日本のチーム(リコーブラックラムズ東京)に移籍するペレナラも、NZ国内で最後のブラックジャージを着る。その最後の試合が地元のウエリントンで、背番号9での出場。以前、ハリケーンズで長年コンビを組んでいたボーデン・バレットとのハーフ団コンビでNZ国内最後の試合を締めくくることも合わせ、感動的なものとなりそうだ。
「サム(ケイン)とTJ(ペレナラ)、そして選手たちにとって、特に特別な夜になる。彼ら(ケインとペレナラ)はチームへの貢献を称えるパフォーマンスを披露するだろう。サムはオールブラックスのセンチュリオンの高級なクラブに加わることになる。それは、彼の不屈の精神と仕事(ラグビー)に対する倫理の証です」ロバートソンHCは語った。
オールブラックスは勝てば、2018年以来のウエリントンでの勝利。ケインとペレナラのNZ国内で最後の試合ということもあり、選手のモチベーションは高い。
NZ国内のラグビーファンは、10月末から始まる北半球遠征の前に強いオールブラックスが見たいと強く思っている。何かと話題性のある試合となるが、ワラビーズの巻き返しと合わせて熱いウエリントンの夜になるだろう。