logo
NZに渡り7年。三宅駿、ついにカンタベリー代表デビュー
ホークスベイ戦の後半23分からピッチに立った。(撮影/松尾智規)

NZに渡り7年。三宅駿、ついにカンタベリー代表デビュー

松尾智規


「地元チームの代表となり、ホーム(クライストチャーチ)でデビューできたことは凄く嬉しい」
 そう語ったのは、NPC(NZ国内州代表選手権)のカンタベリー代表でデビューをした三宅 駿(みやけ・しゅん)だ。

 三宅がニュージーランド(以下、NZ)に来たのは2017年、Year11(高校1年)の時だった。歴史のあるクライストカレッジ(クライストチャーチ)に留学。そこからNZラグビーでの挑戦が始まった。
 留学してまもなく、同校のサイトで「A rising rugby star」のタイトルで大きく紹介されるなど、Year11から1st XV(一軍)で活躍した(高校1年ではSHでプレー)。

 ポジションは司令塔の10番。173センチ、87キロと、がっちりした体系。クルセイダーズU20(2021年)など、ここ数年はカンタベリーBに選ばれるなど着実に経験を積んでいる。
 そして2023年8月27日には、地元カンタベリーの近郊の地区、タズマンからケガ人のバックアップとして声がかかり、待望のNPCデビューを果たした。

 NZ留学から7年の月日が経ち、三宅の夢のひとつであるカンタベリー代表でのデビューとなった試合は、8月28日(水)だった。開幕から3連勝中のホークスベイをホームのクライストチャーチに迎えておこなわれた。

 試合のメンバーには、FWでは、FL/NO8ビリー・ハーモン、FLトム・クリスティー、BKはライアン・クロッティー、FBチェイ・フィハキなどの名が並んだ。他にも、スーパーラグビーで活躍する選手たちが多くいた。
 三宅は22番でリザーブ入り。ウォームアップから、イキイキとした姿があった。緊張というより、その場を楽しんでいる姿が見られた。

 試合は、序盤から勢いがあったホークスベイが開始10分で2トライを挙げる。その後もカンタベリーは押され気味だったが粘り強いディフェンスを見せた。
 耐えた後、カンタベリーがインターセプトからトライを奪った。さらにペナルティゴール(PG)を決め、一時は逆転する場面も見られた。
 しかし前半終了間際にホークスベイがPGで13-13と追いつきハーフタイムを迎えた。

高校時代からのチームメートで同級生のザック・ギャラハーと。(本人提供)

 後半に入ってもシーソーゲームの展開が続く熱い試合となった。
 18-20カンタベリーが2点ビハインドで最終クォーターに突入。サイドラインで入念に体を動かす三宅の姿があった。控えのチームメイトと身体をぶつけ合っていた。出番は近かった。
 63分。試合がどちらに転がるか分からない緊張感のある場面で、いよいよ三宅がピッチに立つ時が来た。
 場内アナウンスで「カンタベリーでのデビュー戦となる“ Shun Miyake “」と紹介されると、スタンドから拍手が起こった。
 観客まではっきりと聞こえるほどの大きな声を出して指示を出す。巧みなパス、果敢にタックルする姿も何度か見られた。

 試合は終盤に入り、21-27とカンタベリーが6点ビハインド。残り時間は10分を切った。
 ホームの観客の声援を背に、カンタベリーが逆転を狙って敵陣深くまで攻め込む。しかし、ハンドリングエラーが続いた。チャンスを活かせず、そのままホークスベイに逃げ切られてしまった。
 試合後は、観客もピッチに降りる事が許された。
 キウイ(NZ人)の友人たちに囲まれた三宅の姿があった。祝福を受けている様子からも、NZの生活にすっかりとけ込んでいることが分かる。

 本人に話を聞く機会を得た。
 カンタベリー代表でのデビューについて、「嬉しかったです」と思わず笑顔がこぼれた。
「途中出場で、今日みたいな緊張感のある競った試合で出してもらえたことは、とてもいい経験になった」
 試合には敗れたものの、プレッシャーの中でのプレーを楽しんだようだ。

 昨年のタズマンでのデビュー時との気持ちの違いに関しては、「地元のチームで、しかもホーム(クライストチャーチ)でデビューできた事が凄く嬉しいですね。高校で同じチームだったザック・ギャラハーをはじめ、よく知っている選手がいる中でプレーしたデビューは特別でした」
 地元でのデビューに気持ちは高ぶっていた。

 今後の目標について、「まだ(カンタベリーの)契約選手ではないので、継続して使ってもらえるようにしたい。まずは、NZの永住権を取りたいので、それまではNZでのプレーに集中したい」と話した。
 2,3年は、NZで挑戦していく強い意志が感じ取れた。数年後に日本代表から声がかかった場合は、「その時になったら考えます」。将来の日本代表でのプレーの選択も否定しなかった。

 夢だったカンタベリー代表でのデビュー戦を終えた直後だったため興奮している様子があったものの、プレー同様、落ち着きのある受け答えだった。

 冷静にゲームを読む能力、状況判断の上手さが光る選手。この試合でも見せた、パンチのあるキック力も魅力のひとつだ。
 昨年のタズマンでのデビュー戦はゴールデンポイント(延長戦で先に得点を取った方が勝ち)でのプレーで、今回もシーソーゲーム。プレッシャーのかかる状況での出番が続いた。いずれの試合もプレシャーに物怖じせず、冷静にプレーする姿があった。

 歴史のあるカンタベリー代表としてプレーすることは簡単ではない。そんな中で日本人選手が活躍していることが誇らしい。とても充実している様子が表情からもうかがえた。
 9月1日におこなわれるウエリントン戦では10番で先発に抜擢された。
 今年で23歳になる。どこまで昇り詰めるか。

緊張のデビュー戦を終え、ロッカールームでリラックス。(本人提供)

ALL ARTICLES
記事一覧はこちら