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またまたフルハウス。パリ五輪の開会式前、ラグビー競技(セブンズ)2日目(7月25日)のスタッド・ド・フランスのスタンドは満員となった。
各チームがプールステージの最終戦(3試合目)を戦った午後2時から17時。好天と好ゲームに、詰めかけたファンは楽しい午後を過ごした。
多くの人が心待ちにしていた試合は、この日の4試合目のフランス×フィジー。ホスト国として金メダルを手にしたいフランスと、リオ五輪、東京五輪を制して連覇中のフィジーの対戦には、大きな声援が飛んだ。
その試合は、フランスが先制したものの、結果的には19-12でフィジーが勝った。
アントワンヌ・デュポンが出てきた後半3分過ぎには、歓声のボリュームが最大となった。
フランスは立ち上がりの攻防で50秒守り続け、相手の反則を誘う。その後、オフロードパスからチャンスを作り、先制トライを決めた。
前半は5-5だった。
後半に入ると、フィジーらしい攻守が見られた。
2分前、ターンオーバーからボールを手にすると、大きくボールを動かしてトライ。フランスの攻撃を好守でしのぎ続け、6分前にもトライを追加した。
フランスも最後にトライを返したが届かなかった。
日本はこの日の5試合目。南アフリカとの対戦だった。
前日、ニュージーランド、アイルランドに完敗した。しかし、個々の動きはキレていただけに、乾坤一擲のパフォーマンスが期待された。
しかし、結果は5-49。奪った5点は、後半2分過ぎに植田和磨が挙げたトライのみ。
0-35とスコアに大きな差がついてからだった。
この試合は南アフリカのキックオフで始まるも、ボールを確保したのは蹴った側。
しかし日本は信条としている前に出るディフェンスで相手を止め続けた。ボールを奪い返すシーンもあった。
それが続かなかったのは、反則で相手に攻撃機を与えたからだ。
1分に先制トライを許すと、2分過ぎ、3分過ぎ、5分過ぎ、6分過ぎと5トライで35点を奪われた。
大半の時間、南アフリカにボールを持たれた。キックオフでボールを確保できなかったのが響いた。
後半に5点を返した後も2トライを追加された。
結果、参加12チーム中総合12位でプールステージを終え、9位〜12位順位決定戦へ進むことになった。
男子セブンズ代表通算キャップ62と最多キャップホルダーの坂井克行さんは、南アフリカ戦を終えて「試合の入りは悪くなかった」と言った。
「よく前に出て、タックルも決まっていました。ただ、それがハマりかけたところで反則をしてしまい、リズムに乗り切れませんでした」
前日出た課題の修正があったからうまくプレッシャーをかけられていた。
結果、インターセプトもできたけれど、反則でボールを渡してトライを許す。好ステッパーの動きについていけず、抜かれる点の改善については一日では無理だった。
ディフェンスで極端に前へ出たところでロングパスを外に放られ、アウトサイドの相手に走られたケースが何回もあった。バッキングに返り、そのままトライを許すシーンがなかったのは、デメリットを承知の上でラッシュディフェンスを採用したからだ。
「そういう意味で、いろんな準備をして大会に臨んだことは分かります。しかし、キックオフでボールを確保できないことが多く、特に9割近くが相手のポゼッションだったように感じた。セブンズでそうなると、圧倒的に不利です」
他の試合もテレビで観戦した坂井さんは、セブンズにおいての、ディフェンスの重要性をあらためて知ったという。
「フィジーを見ていると、やはり一人ひとりのタックルがいいし、守れる幅も大きい。ブレイクダウンになったときの判断も良かった」
日本には、その点が物足りなかった。
20時キックオフの9位〜12位戦。初戦のサモアとの試合は、結果から書くと7-42の完敗だった。
しかし、それまでの試合より、自分たちのスタイルを出せた14分だった。
立ち上がり、前に出るディフェンスの裏を突かれて抜かれ、トライを許す。その直後には反則後のターンオーバーから再びインゴールにボールを置かれて0-14とされた。
しかし、ラッシュディフェンスが機能してサモア陣深くでプレーし、スクラムから野口宜裕がトライを返した。前半は7-14だった。
後半に入って4トライを許して差をつけられたものの、何度もサモア陣に攻め入った。アタックは通用する場面がいくつもあった。
前半から共通したのは、前戦と同じように、勢いが出そうな時に反則で自らそれを失ってしまったことだ。
7月26日はパリ五輪開会式もあり、男子セブンズは開催されない。最終日は27日におこなわれる。
世間の目はフランス×南アフリカ、フィジー×オーストラリアの準決勝と、その先の3位決定戦、決勝に集まるだろう。
日本は、ウルグアイとの11位〜12位決定戦に臨む。ラストゲームこそ、積み上げてきたものを14分間出し続けて勝利を手にしたい。