世界トップクラスのSH、アントワンヌ・デュポンのチームメートになる。
日本代表の齋藤直人がスタッド・トゥールーザン(トゥールーズ)でプレーする。7月10日、同チームから正式に入団が発表された。1シーズンの契約だ。
8月には27歳になる齋藤は、早大卒業後、4シーズンプレーした東京サントリーサンゴリアスを2023-24シーズン限りで退団。エージェントを介し、フランスの複数クラブと入団交渉を続けていた。
「海外クラブでのプレーは、学生時代からの一つの目標でした」と話す。
「昨年のワールドカップ(以下、W杯)を経験し、その気持ちがより強くなりました」と続けた。
少年時代から海外への思いを胸に抱いていた。
その思いがより膨らんだのは、大学3年時だった。ナショナル・デベロップメント・スコッドの一員に選ばれて海外に出て、戦い、憧れの気持ちが明確な目標になった。
昨年(2023年)のW杯で、その想いはますます強くなった。
齋藤は、全4試合に出場し、2試合に先発した。チームは2勝2敗でプールステージでの敗退となった。
まずは自分が、より厳しい環境でプレーする必要があると思った。
世界のトップ国とプレーヤーが集まる大会に参加し、SHとして感じたのは紙一重のところで勝負が決まることに加え、キッキングゲームへの対応の重要性だ。
負けたら終わりのノックアウトステージでの試合や頂上決戦では、特にキックの重要性や9番から蹴り出されるボールが大きく戦況に関係していた。
ヨーロッパのラグビーは、普段からその傾向が強い。
だからその中に身を置くことを望んだ。自分のスキルや判断力を引き上げる環境を求めた。
プレースキックも自分の武器として磨きたい。
トゥールーズに感じている魅力について、「チャンピオンチームで多くのタレントがいます。学ぶべきことが多い」とした。
試合数の多さも魅力のひとつに挙げた。
同じポジションにデュポンがいることに加え、SOにはロマン・ンタマックという天才もいる。
彼らをはじめ、フランスのラグビーが大事にしている「閃きのあるプレー」を身近に感じ、採り入れることは、自身がキャリアを重ねていく中でも「伸ばしていきたい」部分だ。
多くのことを吸収、経験して目指すところは、「ワールドクラスの選手になる」と決意を口にした。
フランスはSHがピッチの王様と言われる場所だ。堂々とチームを操ることが求められる。
ワールドクラスのSHをイメージしたとき、頭に浮かぶのは「テストマッチでチームを勝利に導く9番」だ。
常勝チームで、そのエッセンスを身につけたい。
「1年目とか、日本人だからとかそういう考えではなく、最初から、積極的にSHの一番手を狙うつもりで競争に挑みたいですね。引いたマインドではなく、どんどんアグレッシブにいきたいと思っています」
入団交渉の途中、各チームのヘッドコーチらとオンラインで繋がり、会話や質問のやり取りをする機会があった。
お前の強みはなんだ。どういうトレーニングをしているのか。コミュニケーションは大丈夫か。
そんなやり取りすら刺激になった。そこには、自分を引き上げてくれる環境がある。
できるだけ長く彼の地でプレーを続けたいと考えている。
2027年のW杯でブレイブブロッサムズの9番としてチームとともに世界の上位に立つ。