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【日本代表欧州4連戦を追っかける/DIARY⑧】ウェールズへ。今季3戦目。勝ち越しへ「密につながる」
カーディフの中心から電車で約20分のグラウンドでトレーニングに励む日本代表。(撮影/松本かおり)
2025.11.12
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【日本代表欧州4連戦を追っかける/DIARY⑧】ウェールズへ。今季3戦目。勝ち越しへ「密につながる」

田村一博

 アイルランド戦を終えた日本代表は試合翌日、11月15日にウェールズと戦う地、カーディフへと移動。こちらも一日遅れであとを追った。

 試合翌日はダブリン訪問の証を一応残すため、観光コースのひとつの鉄板、ギネス工場巡りへ。2017年の女子ワールドカップ取材時に訪れて以来、2度目だった。
 午後はワールドラグビーで働く松尾エイミさん宅にお呼ばれ。海辺の素敵な部屋にラグビー仲間が集まり、わいわいと楽しい時間を過ごした。

アイルランド戦でのFL下川甲嗣。(撮影/松本かおり)


 11月10日は午前中、早めにダブリン空港へ移動し、日本代表のオンライン会見に参加した。
 ディフェンスリーダーでもあるFLの下川甲嗣は、前半を10-17と健闘するも、最終的には10-41とされたアイルランド戦について、「いい形で前半を戦いながらもチャンスにトライを取り切れず、ミスや規律の乱れから終盤に引き離された」と、望んだような展開に持ち込めなかったことを悔やんだ。

 試合を終えてチームでは、チャンスゾーンに入った時のコミュニケーション不足や小さなタイミングのズレが問題点として挙がり、「1週間の準備の中でイメージや遂行力を磨いていこう」と話し合ったという。
 7万4000人近くの観客を飲み込むプリンシパリティスタジアムでのウェールズ戦は大観衆が予想される。その中でも密に意思疎通を図ることが重要だ。

 アイルランド戦の前半は、その前の試合、南アフリカ戦で体感したフィジカルの強さを自分たちのスタンダードとして、ストラクチャー化された攻撃を仕掛けてくる相手の生命線、ブレイクダウンに強く圧力をかけたことが奏功した。
「相手にテンポを出させなければ、こちらはその間にセットし、また(全員で)前へ出られる」

 ウェールズ戦でも粘り強く守りたい。
 FW、BK間のコミュニケーションを取りながらも、予想外のことが起きた際の対応力の大事さも学んだ一戦を経て、勝利への意欲は、より強くなっているようだった。

【写真左上と中央上】ギネス工場巡り。【写真左下と右】ダブリンの中心地に近いトリニティーカレッジ。【写真中央中】ダブリン市街から電車で約30分のHOWTHの海。【写真中央下】エアリンガス機でダブリンへ


 オンライン取材後、しばらく空港で過ごしてアイルランドを離れた。
 カーディフへはダブリン空港からエアリンガスを利用してブリストルへ。プロペラ機で1時間半のフライトだった。80人乗りと小さな機体だったが、好天のため揺れずにホッ。快適だった。
 空港からテンプルミーズ駅までバスで行き、そこから鉄道で約1時間。夕方に宿泊先へ到着した。

 ダブリンからUKに到着して驚いたのは、その寒さ。ダブリンより気温は低く雨。まいったなあ。
 晴れ男だと思っている。今回の旅もここまで10日以上、雨が多い地域に来たのに小雨はあっても、持参した折りたたみ傘を開く機会はなかった。カーディフでの1週間も傘なしで乗り切れるだろうか。

 ウェールズを訪れるのは2015年のワールドカップ以来だ。あの時はラグビーマガジンの締切りを終えた後に渡英した。
 9月19日にブライトンでおこなわれた日本×南アフリカ、同23日の日本×スコットランド(グロスター)を入れるため、毎月25日発売のものを28日に遅らせた。
 そんなスケジュールだったため、南アフリカ戦とスコットランド戦は日本でテレビ観戦。実際に取材できたのはミルトンキーンズでの日本×サモアとカーディフでのニュージーランド×ジョージア、ウェールズ×フィジーの3試合だけだった。

【写真左上】ブリストルのテンプルミーズ駅。【写真左下と右】ウェールズ代表の試合を伝えるポスター。【写真中央上】プロペラ機でした。【写真中央中】はやくもクリスマスムード。【写真中央下】宿泊先の近くのパブ。


 その前のウェールズ訪問は1999年。こちらもワールドカップ。ウェールズがホストユニオンとなって開催された大会で、開幕戦、決勝戦はカーディフのミレニアムスタジアムで実施された(現在のプリンシパリティスタジアム)。

 当時、大会展望号を作る際に小林深緑郎さん(2024年9月1日に逝去)にとてもお世話になった。その中でよく覚えているのが、ウェールズの地名の読み方についてだ。
 例えば『Pontypridd』。今回の日本代表のトレーニング会場もその地域にある。「ポンティプリッド」と読みそうだが、ウェールズ語の発音では「ポンティプリーズ」。『Llanelly』は「スラネスリー」だ。

 教わったそんなことを思い出したら、夜、小林さんが夢に出てきた。
 朝になって地元の人に『Pontypridd』の発音をあらためて尋ねると、確かに「ポンティプリーズ」。ラグビー博士は本当にいい人だった。

 ウェールズに到着して感じるのは、本当にラグビーが根づいているということ。鉄道の駅には『ウェールズ×日本(カーディフ・プリンシパリティスタジアム、17:40キックオフ)の日、クイーンストリート駅は19時で閉鎖されるので、試合後はセントラル駅を利用してください」とあった(英語とウェールズ語で)。
 パブにもウェールズ代表の試合日程記載のポスターが貼られていた。

 日本代表がカーディフでウェールズと戦ったのは2016年が最後。その時は敗れたけれど、30-33と競ってスタジアムを沸かせた。1983年には24-29という名勝負もある(ウェールズ側はWales XVとして対戦)。
 7月の日本での対戦は、24-19、22-31と1勝1敗。敵地での決戦で白星を手にできれば、チームが得る自信は大きい。

ほぼ満員だったアイルランド×日本。ウェールズ戦も、こんな光景が見られるか。(撮影/松本かおり)


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