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【Just TALK】大きな期待。「それを活かすも、殺すも、自分次第」。木田晴斗[クボタスピアーズ船橋・東京ベイ]
体の強さと気の強さが魅力。豪快に走る。2024-25シーズンは7試合に出場して5トライ。(撮影/松本かおり)
2025.08.12
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【Just TALK】大きな期待。「それを活かすも、殺すも、自分次第」。木田晴斗[クボタスピアーズ船橋・東京ベイ]

向 風見也

 カムバックと同時に代表デビューを果たすかもしれない。

 ジャパンラグビーリーグワンで昨季準優勝したクボタスピアーズ船橋・東京ベイの木田晴斗が、8月上旬までに取材対応。12日に発表される、パシフィック・ネーションズカップのための日本代表メンバー入りへ意欲を示した。

 目の前のひとつひとつのタスクを全うするのが先決だと前置きしつつ、高揚感を覗かせた。

——3月下旬を最後に試合から離れています。もし今度ジャパンに入り、試合に出場したら、実戦復帰と同時に初のテストマッチを経験することとなります。

「それはそれで、新しいチャレンジ。(実現すれば)ラグビー人生において問われるというか、なかなかできない経験。楽しみではあります」

 身長176センチ、体重90キロの26歳。全国的に無名だった関西大倉中、高を経て、立命館大でも主将を務めた。

 スピアーズで実質1年目に臨んだ国内リーグワンの2022-23年シーズンには、ウイングとして16トライをマーク。ベストラインブレイカーも受賞した。プレーオフ決勝では貴重な決勝トライを決め、クラブ史上初の日本一に輝いた。

 その直後に日本代表に初選出され、同年のワールドカップフランス大会行きへ近づいた。

 しかし、怪我、感染症のため、本領発揮はならなかった。

 翌年度以降のリーグワンでも故障に泣いた。

 2季ぶりにファイナリストとなった2024-25シーズンも、3月14日の第11節に先発しながら前半38分に交代。その約3週間後の4月7日、長期欠場を発表していた。左膝の手術のためだ。

1999年4月9日生まれ、26歳。176センチ、90キロ。宝塚RS(小5〜/小中)・関西大倉中→関西大倉→立命館大。ジュニア・ジャパン、U20、高校日本代表。2023年夏には日本代表に入り、合宿等には参加した。(撮影/向 風見也)


——あらためて、シーズン中にスピアーズを離れた経緯を伺えますか。

「去年のプレシーズンは結構、身体の調子がよかったんです。ただ、どういう原因かはわからないですけど、膝の古傷のところ(違和感)が出てきてしまって、痛みに悩まされて、注射を打ったり、水を抜いたりして試合に出ていました。それが、どんどんひどくなって…。

 その状態でやっていくのはどうなんやろう、と思いながら、できる限りのことをやっていく方針でした。ただ、膝の痛みのせいもあって、逆足の肉離れが3月に。肉離れのほうは(プレーオフの)準決勝までに間に合う(復帰できる)かどうかという感じでしたが、膝が心配でした。また怪我をするのもよくないし、自分はいつもそこで(無理して)やってしまうから身体のバランスなどがずれて、悪いループに入っていた。そこで、チームの前川(泰慶=ゼネラルマネージャー)さんやフラン(・ルディケヘッドコーチ)と相談しました。フランは『手術をせずに残ってほしい』ということでしたが、早く手術してしまおうという決断に至りました。(オペをしたのは)4月3日です」

——就任2年目となる日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチには、早くから期待されていました。昨季も働きをチェックされるなか、よいプレーでアピールしたこともあります。好循環にいたようにも映りましたが、あえてリセットに踏み切るのは難しくなかったですか。

「いい評価をしてもらいましたけど、個人的には全然納得いくプレーはできていなかった。何か、かばってやっている感じ。それは、ずっと見ている人ならわかる。その状態で世界と戦えるかと言えば、そうではない。以前はごまかしていましたが、いろんな怪我を乗り越えていくうち、フルでやることの重要性がわかった。もちろん、無理しないといけないこともあると思いますが、このタイミングは手術したほうがいいと考えました。ドクターもそう話していたので」

——退院、リハビリ期間を経て、グラウンドの練習に戻ったのはいつからですか。

「6月末くらいからは軽いランニングを。本格的にフィットネスなどをはじめたのは、おそらく7月の2週目あたりからです。(状態は)去年よりもいい。まだ『硬さ』はあるし、これから試合勘も上げていかないといけないですけど」

——最近、ジョーンズさんとはどんなやり取りをしていますか。

「『コンディションを戻せるか?』『戻せると思う』と。とにかく、その話をしていました」

——今年7月までのキャンペーンの際、ジョーンズさんは木田選手をコンディション不良により招集を見送ったメンバーとして紹介しました。テストマッチ未経験者にあっては、大きな期待がかかっています。

「ありがたいことっす。でも、それを活かすも、殺すも、自分次第です。コンディションが戻ればできる自信がある。それは、ここまで怪我をしたなかで得られたものです」

——再発防止へは。

「柔軟性、パワーの発揮の仕方、ランニングフォームを変えています。無駄な力を使わず、プレーに柔らかさも入れていこうかと。『出す時は、出す』と、使い分けをしていきたいです。

 調子がいい時はそういう風にしていた。それこそ最初のシーズン(タイトルを取った時)は、力が抜けている時もありました。ただ、何かの怪我があると力が入り、悪いループに入っていた」

——ちなみに7月中旬までの日本代表は、対ウェールズ代表2連戦で1勝1敗。どう見ましたか。

「見て言うのはめちゃくちゃ簡単なので、(感想は)言わないです。

 ただ、身体のでかい外国人を相手に日本人が活躍する難しさは感じました。そんななかでやってのける選手になるのが自分の目標です。

 ジャパンのレベルも、(テストマッチ4勝7敗と負け越した)去年よりもアップしている。そこに入った時、自分の強みを出していきたいです」

2025年3月1日のブレイブルーパス戦に途中出場し、トライを挙げる。仲間の祝福を受けた。(撮影/松本かおり)


——期待される「強み」には、ハイボールの競り合いがあります。

「あそこはメンタルも大事。あとは、スキル、ボールの到達点へのジャンプスピード、身体の入れ方も重要。どの角度でいけば競り勝てるかは、去年のシーズン(離脱前)に勉強できた。(詳細は)あんまり……周りに真似されたらあかんので」

——日本代表と言えば、11月1日にワールドカップ2連覇中の南アフリカ代表とのマッチメイクが確実視されています。それと前後し、他の強豪国とのゲームもあります。

「チャレンジしたいですね。そこで実力を見せられれば、海外への近道ですし」

 その言葉通り、海外志向の持ち主である。今度の故障によって当初の計画は狂ったというが、段階的にアピールを重ねて南半球のスーパーラグビーに挑みたい。

 もちろんいまは、「先を見過ぎない」。置かれた立場を認識する。

「まだ復帰もしていないですし。1日1日、トレーニングに集中しています」

 当面は、国内のバトルにも没頭する。

 再来年度からリーグワンのレギュレーションが変わり、日本出身の選手の出場枠が広がる見込みだ。

 現行のルール下でも主力級だった木田は、件の変更についてプロアスリートらしい所感を述べる。

「どうなっていくかはわからない。ただ、(これまで)日本人扱いの外国人選手(カテゴリA=日本代表資格のある海外出身者)の価値が上がったじゃないですか。(今後は)活躍できる日本人の価値が上がると思う。そういう意味では、僕らにとっていいことです。試合に出る、出ないは、実力があれば出られるので(意識していない)」

 多様性、多文化共生を訴える日本代表にとって、得難き個性ではないか。



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