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【Just TALK】『(仏某チームと)明日契約書を送る、くらいのところまではいったのですが」、国内移籍へ。竹内柊平[日本代表]
今季は桜のエンブレムを胸に、マオリ・オールブラックス、ウェールズ×2と、ここまで3試合に出場している。竹内は写真中央。(撮影/松本かおり)
2025.07.27
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【Just TALK】『(仏某チームと)明日契約書を送る、くらいのところまではいったのですが」、国内移籍へ。竹内柊平[日本代表]

向 風見也

 ラグビー日本代表として15キャップを持ち、2024-25シーズン限りで国内リーグワン1部の浦安D-Rocksを退団していた竹内柊平が、かねて希望していた海外挑戦を一旦、断念。日本の強豪クラブへの移籍が濃厚となった。

「優勝争いをするのが楽しみ。これまでのキャリアで積んだ反省も活かせる。新しい自分を見せたいですね」

 全力は尽くした。
 
 6、7月は菅平での代表候補合宿、正代表の宮崎キャンプに参加しながら、現地の関係者とオンラインで面談してきた。

「向こう(現地時間)の昼にやるから、こっちの夜11時なんですよ。寝るのは12時で、朝練は6時半から…。ただ、絶対に(海外に)行きたかったし、どっちも手を抜きたくなかった。大変でしたけど、踏ん張りどころだと思っていました。宮崎でも毎週月曜に。水曜がビッグデイ(トレーニングに負荷のかかる日)だったんですけど、(交渉翌日の)火曜もまぁまぁきつかった。…それを、いい感じにやりながら過ごしました」

 7月5日に福岡・ミクニワールドスタジアム北九州でウェールズ代表を24-19で下した直後には、交渉を一本化していたフランス・トップ14某クラブの経営層、首脳陣から色よい返事をもらっていた。

フランスに行けばスクラムはもちろん、得意のフィールドプレーもさらに伸ばせると考えていた。(撮影/松本かおり)


 しかし、願いは叶わなかった。

「チームのGMやヘッドコーチには『欲しい。うちには○○という構想がある。柊平が××(在籍する有名選手)にケツを押されながらスクラムを組むのが本当に楽しみだ』と。そんなこと言われたらめっちゃ興奮するじゃないですか。それが…。びっくりしました。これで契約できないことがあるんだと…」

——フランスにいる代理人と向こうのクラブがどんな話をしたのか、気がかりです。

「もともとメディカルジョーカー(故障者の穴埋め)として4か月契約で行けるはずだったんですけど、ギリギリになって『その後、(来季までの)残り8か月は無所属になってしまう』『(在籍期間に)もし怪我をしてしまったら補償ができない』から難しいと判断されました。僕はそれでも行きたかったですし、『明日、契約書を送る』くらいのところまではいったんですが…」

 日本の代理人とは、7月中旬までに来季の方向性を定めたいと話し合ってきた。いたずらに結論を先送りして「無職」のままでいるデメリットを鑑みたためだ。

 このほどフランス側のリアクションを受け、オファーの返事を待ってくれていたリーグワンのチームと向き合うことにした。かくしていまに至る。

——最後まで話し合いのあったフランスのクラブは、代表活動のパフォーマンスを参考に決断を下すと見られていました。竹内選手は昨季のリーグワンでこそ出番は限られましたが、6月28日にJAPAN XVとして出たマオリ・オールブラックス戦(東京・秩父宮ラグビー場/●20-53)からの3連戦でハイパフォーマンスを維持。望んだ通りの進路を選べそうに映りました。

「僕も手応えはあった。失った自信を取り戻した3試合でした」

 身長183センチ、体重115キロの27歳。全国大会と縁の遠かった地元の宮崎工から九州共立大へ進み、クラブ史上初めて大学選手権に出場した。

 2020年度には元所属先の前身であるNTTコミュニケーションズシャイニングアークス(2021年度は名称の末尾に「東京ベイ浦安」と追加)へ入り、ポジションを以前のフォワード第2、3列から最前列の右プロップへ変えると、運動量、突破力で台頭した。

 2022年に代表デビュー。2024年にエディー・ジョーンズが約9年ぶりにナショナルチームのヘッドコーチとなってから、一気に出番を増やした。

 現体制の名物、早朝からの猛練習へも前向きだ。

「きついですけど、めっちゃ楽しいです。成長できるいい機会で、それを乗り越えた後の自分(に会えること)が楽しみです」

 自然と世界に目が向いた。

 昨年11月9日に敵地でフランス代表に12-52と大敗した際、日常的に世界トップ級の空気に触れるべきと痛感。退路を断ち、国内外のエージェントを頼ってチャンスを模索してきた。それは話した通りだ。

 紆余曲折の末、今回は、自国きっての名門で多くを学べそうだ。そのクラブは、もし日本に残るならば加わりたい場所だったという。

 相思相愛に近い形での入団発表を間近に控え、思いを語った。

——日本代表は8月中旬に再始動の見込みです。同月下旬から日本やアメリカで挑むのは、フィジー代表をはじめとする環太平洋諸国も絡むパシフィック・ネーションズカップ。竹内選手にとって、もし海を渡っていればプレーできなかったかもしれない大会です。

「(代表に)選んでいただければ、もちろん(行く)。エディーさんからは、フランスの件については『(世界では)よくあることだ。くよくよせず頑張るしかない』『ここから、パシフィック・ネーションズカップでナンバーワンのタイトヘッドになるチャンスがある。そこを目指そう』と」

自分が自分がではなく、一貫性を持って自分の100パーセントを出すことが大事と気づいた。(撮影/松本かおり)


——さかのぼって7月の対ウェールズ代表2連戦は1勝1敗でした。昨年のテストマッチの戦績が4勝7敗だったジョーンズさんにとっては、自身の去就をかけた舞台でもありました。

「エディーさんは今年、本当に自信のなかった僕をずっと励ましてくれました。勝たせたいと思ったし、だからパフォーマンスがよかったのもしれないです。自分のためじゃなくて、日本のため、コーチのため、家族のため、チームメイトのため…と、皆のためにやりました。就活もありましたけど、試合の時は移籍のことなんか全然、考えていませんでした」

——これからの日本代表の課題は。

「代表(選手)同士がひとつになることが大事です。(取材した7月下旬時点で世界ランク1、3位の)南アフリカ代表、アイルランド代表がいい例。あいつら、めちゃくちゃ仲がいいんですよ。そうならないと、いくらセイムページ(同じビジョン)を見ろと言われても絶対に見られない。僕らも、一歩ずつステップは踏んでいる。ここからは、横とのつながりをさらに深める。そのことはエディーさんもわかっている。今回(ウェールズ代表戦までの)の合宿って、部屋割りがすべて日本人と外国人のペアになっていたんです」

——あらためて、新天地では「キャリアで積んだ反省も活かせる。新しい自分を見せたい」とのことです。

「反省は『自分の仕事をやる』。背負い過ぎるというか、考えなくてもいいことまで考えてしまうとパフォーマンスがよくならない。それをD-Rocks、ジャパンで学びました。ここからはチームにコミットしてやっていく。

 ビッグプレーをして勝つ試合もありましたが、そういう時はブレイクダウン(での地味な仕事)がよくないこともある。そうならないように、黙々と目の前の仕事をやる。もしかしたら派手さはなくなるかもしれませんが、勝つ一部になることの方が大切です。チームの仕事をする。自分のターンが来たら強みは活かす。局面ごとに、100パーセント以上の力を出そうとするのではなく、100パーセントを出す。

 伝統のあるチームとの化学反応も楽しみです。チームを引っ張るにせよ、引っ張らないにせよ、強いチームにあるカルチャー、リーダーシップを学ぶことは絶対にプラスになります」

——次のチームで完全燃焼を誓うのを前提に、海外への思いは消えていない。

「(欧州各国の)トップ14、 プロD2、 プレミアシップはコンタクト強度が全く違う。毎週がテストマッチのようで、自分の常識が常識じゃなくなる。そういうところ(ハイレベルな環境)へ突っ込んでいったことで、僕はいままで変われたと思います」

 代表強化のためにも、海外経験を積んだ選手がひとりでも増えたほうがよいと考える。いつか、自らがそのひとりになれたら最高だ。





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