![泥臭く。ひたむきに。宣言通りのデビュー戦。平生翔大[東京サントリーサンゴリアス]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/04/KM3_8529_2-1.jpg)
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突然巡ってきたデビュー戦で自信を得た。
約20分のプレータイムの中で、何度もボールを持って前に出た。タックルを繰り返した。
関西学院大学からチームに加わったばかりの平生翔大(ひらお・しょうだい)は後半21分からの出場ながら、今後の躍動を期待させるパフォーマンスを見せた。
先発HOで、ルーキーにバトンを渡した堀越康介主将は、インパクトを与えた後輩の働きに目を細め、「試合前にみんなの前で、泥臭く、ひたむきにプレーすると宣言した通りのプレーだった」と話した。
プレーオフ進出(上位6チーム)のためには、これ以上負けられない東京サントリーサンゴリアスは、4月27日、花園ラグビー場でトヨタヴェルブリッツと戦い、45-28と快勝した。
通算勝ち点を36とし、この日、静岡ブルーレヴズに敗れて勝ち点30のままだった横浜キヤノンイーグルスとの差を広げ、6位の座をキープした。
攻守でアグレッシブさを出して戦い、相手のフィジカルを削り、8トライを奪ったサンゴリアス。平生がピッチに出たときのスコアは38-14だったが、背番号16はボールを追い、パスを呼び込んで、タックルの機会を探し、体をぶつけた。
16番のジャージーを着る予定だった選手のコンディションが整わず、試合の2日前にベンチ入りを告げられた。
しかし、この試合に向けて試合出場の可能性があることは示唆されていたから「いつでも出られる準備はしていました」。

2月からチームに合流し、レベルの高い練習の中で揉まれてきた。最初はスクラムの組み方の違いなどに戸惑った。ラインアウトも含め、サンゴリアスのセットプレーに慣れるには時間を要した。
スクラムではバックファイブの重さや押しの強さへの対応が難しかった。
同じポジションの先輩や両脇のプロップ、うしろの選手と映像を見ながら、いろんなことを教えてもらった。
「もともとバックローだったのでフィールドプレーは得意だし、ある程度やれる感触はつかみました」
浦安D-Rocks、東芝ブレイブルーパス東京との練習試合にも出場して経験を積んだ。
ワールドクラスの選手や日本代表、トップ選手に囲まれる環境は、得るものが大きい。将来、国際舞台でプレーできる選手になりたくて、「自分がもっとも成長できる場所」と感じてサンゴリアスを選んだ。
オールブラックスの主将も務めたサム・ケイン(FL/NO8)と同じ空間に立って分かったことがある。
「試合中だけでなく練習から、ブレイクダウンの細かいところをすごく大事にする。強度の低い練習も、それが試合につながっているからと丁寧。実戦でも、目立つことのない、細部で貢献している」
ともにプレーしているからこそ知ったものを、自分のプレーにも生かしたい。
そんな日々を過ごして成長できている実感はあったけれど、公式戦のプレッシャーの中で、いつものようにプレーするのは難しいものだ。
そんな中で今回、平生が力を出せたのは、「ゲームシチュエーションをイメージしながら強度高く準備をしてきた」ことも理由も、それ以前に、長く大事にしてきたものがあるから国内最高峰リーグでもいきなりやれた。
関西学院高等部、同大学のラグビー部は、泥臭さ、ひたむきさをチームカラーとしている。
その中に身を置いてきた。そして、サイズに恵まれているわけでもない。
「だから、寝て、起きて、ルーズボールに飛び込むなど、誰でもできるプレーの一つひとつの質を上げること、当たり前のことを当たり前にするレベルを上げる。そういうことをやってきました」
アグレッシブ・アタッキングラグビーを掲げて華麗なように見えるサンゴリアスのラグビーも、その前提にあるのは、泥臭さであり、ひたむきさ。コリジョンで体を張って、ボールを奪ってこそ成り立つ。
チームと自分の価値観が同じだったから、「やれることを全力でやろう」と集中してきたら、チームから求められるスタンダードに近づいていけた。
結果、緊張してもおかしくないデビュー戦の舞台でも、いつも通りにプレーに集中できた。

一生忘れることのない節目の試合の舞台は、学生時代の想い出が詰まった場所だった。多くの人たちが応援に駆けつけてくれた。
「高校時代の花園出場時は、コロナで無観客の中でのプレーでした」
大学最後の試合も、この芝の上で終えた。
大学4年時の関西大学リーグの最終戦。勝った方が全国大学選手権出場という決戦を近大と戦った。
高校時代に花園に出た同期に加え、全国から精鋭も集ったチームは目標を全国4強としていたが、22-29と敗れ、その夢は叶わなかった。
「あの仲間となら、と思っていた目標に届かず、悔しかったし、寂しかった。もっとこのチームでやりたかった。でも、その思いがあるのでいまも頑張れているし、後輩たちも新しいシーズンに挑んでいる。関学にとって、(転機となる)大事なシーズンになったらいいな、と思っています」
浦安D-Rocksに加わり、すでに9試合に出場、5トライを挙げている松本壮馬(WTB)は大学同期の中で先頭を走る存在。
それと比べればスロースタートとなった自分の歩みを遅く感じたこともあったが、デビュー戦を経て追いかける態勢は整った。
負けられない戦いは続く。そして、その先にはプレーオフの舞台。
そのステージこそが、自分を成長させてくれる場所となる。