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エディーが「京都ジョー」と呼ぶ10番。U23代表に選ばれるように全力でやる。大鶴誠[京大]
2004年6月5日生まれ。176センチ、90キロ。京都大学医学部3年生。(撮影/松本かおり)
2026.02.24
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エディーが「京都ジョー」と呼ぶ10番。U23代表に選ばれるように全力でやる。大鶴誠[京大]

田村一博

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 いつも思う。
 日本代表の指揮を執るエディー・ジョーンズ ヘッドコーチの付けるニックネームはいまいちだ。

 京都ジョー。
 京都大学の医学部に学ぶ、同大学ラグビー部の3年生スタンドオフ、大鶴誠(おおつる・じょう)は、東京・府中で実施中のジャパン・タレント・スコッド・プログラム2026(以下、JTS)に参加中だ。

 3月までに3回の合宿が予定されている同プログラム。今回の府中での活動は、2月10日〜17日におこなわれた初回に続いての2回目。3回目は3月中旬に予定されており、その後は3月下旬のU23日本代表合宿、4月1日〜同15日のU23日本代表オーストラリア遠征へと続いていく。

 大鶴は今季初回の大分での活動にも参加した。その際、食事の時間などに笑顔で話しかけてくる指揮官は、自分のことを「京都ジョー」と呼ぶ。
 誠と書いて「じょう」と読むのは、海外でも通用する(呼びやすい)名前に、という両親の考えからだ。パスポートの表記は「JOE」となっている。

 芦屋ラグビースクール出身。灘中、灘高から京大に進んだ176センチ、90キロの10番がJTSに参加しているのは、今回から一般公募の枠を設けたことが入口となった。
 日本代表スタッフによる選考、選抜されたコアメンバー以外に、全国の大学3年生以下を対象に、自薦枠を設けることが2025年12月下旬に発表された。
 それを知った大鶴は、「最大のチャンスだなと感じ、ぜひ申し込もうと思った」という。

「エディーさんは、先生、先生と言って、勉強のことも気にかけてくれます」。(撮影/松本かおり)


 幼い頃から日本代表を目指していた。医師でラグビーをプレーしていた父が1歳の誕生日にラグビーボールとラグビージャージーをプレゼントしてくれた。本人は、「ボールといえば楕円球だと教えられた」と笑う。
 小学校の卒業文集に書いた将来の夢は、ラグビーの日本代表と医師になることだった。

 京大では1年時からCTBやWTBで試合に出場。2年時も2学年上の兄・健さんがSO、自身が15番でバックス陣を引っ張った。
 そして2025年度は関西大学Bリーグで7戦を戦ったチームは3勝4敗で7位。そのあとのB・C1入替戦で大阪公立大(C1・2位)に67-0で勝利し残留した。最初の3試合で10番を背負い、残り5試合は兄が10番で自分が13番を背負った。

 多くの人の目を集めるわけではないリーグの中で、日本代表への思いを持ち続けていた。
 そんな若者にとって今回の公募は、前述のように突如差し込んだ光。プロフィールや自己PR文、自己PR動画の提出を経てプログラムへの参加が決まった時の興奮を「正直震えました」と話した。
 そして、スタート地点に立ったと感じた。

 強豪大学のトップ選手が集まる中に初めて入った別府キャンプでのトレーニングでは、自分のこれまでの日常と比べ、強度の高さとスピードの違いを感じた。
「日本代表が世界に勝つために、エディーさんが求めるレベルは高い。最初は慣れて、ついていくのが課題でしたが、だんだんスピードにも慣れてきました」

 周囲に指示を出すポジション。人より早く動いて考えなければいけない。そこを実践できるようになって、「自分の持ち味であるランも出せてきた印象です」と続ける。
 ジョーンズHCからは、動きながらパスを受けることに注力するように言われている。
「スタンドオフとしてオプションを持って、仕掛けながらもらいなさい、と」

 高いレベルの中に身を置く面白さを体感している。そして、それによって自分も進化する。
 例えば展開時の感覚。アウトサイドのランナーが、普段の試合だったら外で捕まるかな……というシーンで前に出る。
「(ディフェンスに)捕まるかな、と思うところを、1人で打開して裏へ出るようなこともある。最初は先に予測してそこに動くのが難しかったのですが、キャンプ1(別府での合宿)を通して、チャンスになりそうなシーンが分かってきた」
 府中でのキャンプ中に、「もっとリアクションできるようにしていきたい」。

 学力の高さで知られる校名が並ぶプロフィール。それは、プレーヤーとしても尊敬する兄の背中を追ったことが一番の理由と話す。中高時代は「友人と話していて、この人、天才だなと思う人が多かった」。自分については、小中学校時代からラグビーの練習後にしっかり勉強の時間を割いて両立を実現してきたタイプと自己分析する。

 今回のプロジェクトに応募するときも、自分のアピールポイントについてハングリー精神を強く出した。環境にかかわらず、成功する、結果を残すために必要なのは、「最終的には自分の努力次第だと思っています。人一倍成長したい思いは強い。そこを書きました」。
 20年あまりの人生で、それを実践してきた。

考える力を武器にする。高校、大学と、自由な空気の中で育ち、「自分たちでやりなさい、と言われてきました。個人練習で、ランやキックが伸びたと思います」。(撮影/松本かおり)


 大好きなラグビーと勉強の両方に集中する日々は大学でも続く。一般の学生ならテスト期間があるのだろうが、医学生は授業と試験が繰り返されるという。
 試験は月曜日が多いから、リーグ戦が日曜日にあれば、その日は徹夜で勉強し、試験に臨む。それが終われば、練習がないのでリカバリー。火曜日から再び練習に出るサイクルを繰り返す。「寝る時間をちょっと削って両立している感じです」という。

 JTSへの招集が続き、活動期間も長くなれば、毎日はこれまで以上に多忙になるだろう。
 リーグワンチームの目も集めるに違いない。これまで描いてきた未来図と違う絵も見えてくるのではないか。

「自分自身のいまの目標は、U23代表に入ること。(その結果)オーストラリア(への遠征)に行く。その一つだけだと思っています。その先のことは、本当に選ばれてからしか始まらない。本当に自分にとって大きなチャンスです。試練だと思って、このキャンプ、本気でやっていきたいと思っています」

 ラグビーが好きでたまらなくて、日本代表を目指してきた。その人生を考えれば、JTSに呼ばれて「震えた」感激も分かる。
 その夢を叶えた上で、父の姿を見て「人の役に立つことを実現できる」と志した医師への道も全うできたらいい。U23代表選出が一歩目と考えるから、いまはまだ「ここがスタート」と気を引き締める。

 先は長くて、楽しみ。目指すゴールは大きい。




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