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◆54-12はフランスの、対ウェールズ戦最多得点。
フランス代表は敵地、カーディフのプリンシパリティ・スタジアムでウェールズを54-12という大差で退けた(2月15日)。溢れんばかりの遊び心と凄まじい決定力で、「これぞ、フレンチフレアだ」という彼らのラグビーを見せつけ、今後の戦いへの期待を抱かせた。
序盤からフランスはウェールズを圧倒し、61分にフランスが8つ目のトライを決めた時、スコアはすでに54-7。その後、規律の緩みやフィニッシュの甘さが見られ得点は止まってしまった。時折テレビに映し出されるファビアン・ガルチエHCは渋い表情で、隣に座っていたアタックコーチのパトリック・アルレターズと言葉を交わしている。
試合後の記者会見でガルチエHCは、「選手たちが披露してくれたラグビーの質、プレーのバリエーションのつけ方を祝福したい。特筆すべきは、前週のアイルランド戦で機能していた部分を、今回も再現できたことだ。強固なディフェンスラインの質、そしてそこから生まれた規律の良さ(ウェールズ戦でのペナルティはわずか6つ)は称賛に値する」と選手を称えながらも、こう続けた。
「ただ、我々はもっと良くなれるはずだ。非常に多くのチャンスを作り出し、何度も決定機を迎えた。これほど多くのチャンスがあれば、そのすべてをスコアに結びつけられないのは、ある意味では普通のことだ。それでも、もっと精度を上げることができる」

今回も『走行強度』を重視した布陣のFW陣がピッチ上を駆け巡り、攻守でよく働いた。
特に、HOジュリアン・マルシャンと共に代表50キャップの節目を迎えたシャルル・オリヴォンが抜群だった。この日も前週に続いて4番に配置され、BK陣の真ん中に割って入り、30メートルの快走を見せたあとに、CTBエミリアン・ガイユトンのトライをアシスト。また本来のFLの役割に戻って、ウェールズの選手を次々となぎ倒した(15タックル)。そして最後はNO8の位置に入り、力強い突進でトライを記録。代表通算19トライ目となり、自身が持つ「フランス代表史上、最もトライを奪ったFW」という記録を更新した。
3度の大きな負傷(肩、左膝靱帯、右膝靱帯)に見舞われたにも関わらず、その度に、より強くなって帰ってきた。「まさに『不死鳥』だ」とFWコーチのロラン・サンペレは称える。
「今季序盤に復帰すると、とどまることなくレベルを上げ続けている。さらにシャルルには、グループ全体を掌握するリーダーシップと経験があり、それは我々にとって極めて貴重である。彼の存在そのものが、チームメイトに大きな安心感を与えてくれる」と高く評価する。
また、20歳で初キャップを刻んだCTBファビアン・ブロー=ボワリーも期待に応えた。守っては、相手をなぎ倒すようなタックルを一つも外さずに浴びせ、その数は18に上り、チームで最多タックルを決めたFLオスカー・ジェグーの19に次いで2番目に多い。攻めては、巨木のような突進を見せ、8人のディフェンダーを突破。トライも決めた。
CTBでペアを組んだガイユトン、WTBテオ・アティソベと3人の「ポー・コネクション」がこの日のフランスのトライの半分を叩き出し、フランスには、トゥールーズとボルドーだけではないということを世界の舞台で示した。
こうした若手が生き生きと活躍できるのは、SHアントワンヌ・デュポン、SOマチュー・ジャリベール、FBトマ・ラモスの「3人のHB」が、まるで「三つの頭を持つ魔獣」のようにシンクロし、味方のプレーを指揮しているからだ。
アイルランド戦では配球役に徹していたデュポンが、この試合ではラック周辺やサイドのスペースで仕掛け、電撃的な突破を繰り返し、いたるところで「カオス」を創り出す。その後方で、ジャリベールとラモスが目まぐるしく入れ替わり、敵のディフェンスを翻弄する。
「SOの役割もこなせるFBがいることで、SOを補佐できるだけでなく、フィールドの最後方から全体を見渡した視点をチームに提供できる。トマ(ラモス)がSOの位置に入ると、マチュー(ジャリベール)はセカンドレシーバーとして動けるようになり、相手のディフェンスラインを突破することができる。この形は、今大会の最初の2試合で何度も見られた光景だ」とデュポンは説明する。

また、ブロー=ボワリーは「マチューが試合にもたらす『クレイジーなひらめき』、そして、チームに明確なリーダーシップと『声』を与え、選手を配置し指示を出すトマ。彼らがいてくれると、ポジショニングがずっと楽になる」と語っている。
ただ、初戦の対アイルランドも含め、負傷による欠場者もいる。世代交代の真っ只中で順風満帆とは言えない状態もある。さらに、今回対戦したウェールズは、直近の24試合で22敗。今後予定されている、イタリア、スコットランド、そしてイングランドとの対戦で、(組んだ布陣が)どれだけ機能するかを見てみたいところだ。
ウェールズはこの試合でフランスに対し屈辱の8連敗を喫した。最大点差(1998年の0-51)こそ免れたものの、相手に54点もの得点を許したのは、対フランスの歴史において最悪の記録である。黄金時代を築いた世代の引退に加え、ウェールズラグビー界の構造的な問題も抱え、代表チームは極めて深刻な時期を過ごしている。フランスの激しいプレーを前に、連携の欠如とトップレベルでの経験不足が露呈し、フィールド上で迷子になっているようにさえ見えた。
さらに、チケットの売れ行きも芳しくなかった。収容人数7万2500人を誇るプリンシパリティ・スタジアムにおいて、観客数はわずか5万7744人。これはシックスネーションズにおける同スタジアム史上最低の動員数となった(これまでは2002年のイタリア戦での5万8349人が最低記録)。これはウェールズ協会にとって財政的に大きな打撃である。
しかも、その観客のうちフランス人の大群がかなりの割合を占めていた。カーディフ空港の発表によれば、この週末だけで1万3900人以上のフランス人サポーターが空路でウェールズ入りし、その勇姿を支えるために62便もの臨時便が運航されたという。ブルーのジャージーや三色旗を手にしたファンがターミナルを埋め尽くした。
WTBルイ・ビエル=ビアレも試合後、「ウェールズ人よりフランス人の方が多いんじゃないかと思った」と明かすほど、試合中、『ラ・マルセイエーズ』や「アレ・レ・ブルー」というフランスへの声援が、ウェールズの聖地の閉じられた屋根の下で響き渡った。このような状況に胸を痛めるラグビーファンの声は、フランスでも聞かれる。
◆トップ14も進行中。バイヨンヌHC解任!
フランスでは、トップ14もこの週末に行われた。
ペルピニャン×ポーが、嵐のために延期された。先週木曜日(2月12日)にフランス南西部を嵐が襲い、ペルピニャンの本拠地であるスタッド・エメ・ジラルのゴールポストが倒され、ホスピタリティエリアの建物も被害を受けた。土曜日の試合開催のため、急遽ゴールポストを設置し直したが、試合当日再び強風警報が発令され、県知事が試合の延期を決定した。この試合は2月22日に行われる。
ペルピニャンのキャプテンのFLジェイミー・リッチーが、スコットランド代表として出場した先日のイングランド戦でトライを挙げた後、負傷退場した。脛骨の膝関節面の骨折と診断され、2〜3か月グラウンドから離れる見込みだ。スコットランドにも痛手だが、ペルピニャンにとっても、あまりにも大きな損失だ。移籍してきたばかりのシーズン序盤、勝てなかったチームの中でリーダーとして仲間を鼓舞し続けてきた存在を失うのだ。せめて入替戦までには復帰してほしい。そう祈っているところだろう。
リヨンが73-12でモントーバンに圧勝した。
今季、トゥーロンからリヨンに移籍したフィジー代表WTBチウタ・ワイニンゴロが凄まじい勢いでトライを量産している。この試合では開始から8分でハットトリックを達成。トップ14だけで15トライを挙げ(12試合出場)、フランス代表のビエル=ビアレの10トライ(10試合)に大きく差をつけて、現在トライランキング1位である。
スタッド・フランセはトゥールーズをホームに迎え、前半はゲームを支配していたものの、自らのミスで得点チャンスを活かせず、勝利を逃した(9-13)。この試合で、11月のフィジーとの代表戦で負った脳震盪によりピッチを離れていた、トゥールーズのCTBピエール=ルイ・バラシが復活した。代表合宿に合流している。

ボルドーはホームでカストルに57-32で勝利した。年明けに行われたラシン92戦で膝を負傷したSHマキシム・リュキュが戦列復帰し、80分間リーダーシップを見せてチームを導き、飛距離の出るキックで味方を落ち着かせた。ゴールキックも8本中7本成功させた。WTBダミアン・プノーは、ラインブレイク4、ディフェンダービートゥン4、そして2トライを挙げ奮闘している。
ラシン92がバイヨンヌに乗り込み、接戦を制して41-36で勝利した。CTBガエル・フィクーが、レギュラー出演している『Rugby Confidential』というYouTube番組で、「的確なプレーをして、リーダーシップと経験でチームに貢献することを意識していた」と明かしているように、後半途中出場し、チームメイトに気を配り、チームを落ち着かせ、リーダーぶりを発揮している。
一方、バイヨンヌは、19か月にわたりトップ14で無敗を誇っていたホームで2連敗となった。昨季、トップ14の準決勝に43年ぶりに進出するという快挙を遂げたが、今季はその勢いを失っている。
そしてグレゴリー・パタHCがクラブを去る事になった。フィリップ・タイエブ会長との関係の悪化が原因だ。この試合の数日前にクラブの取締役会にパタから提出された書簡には、彼が関与せず決定されたプレシーズンマッチのスケジュール、彼が選んだわけではないアシスタントコーチ陣の採用、そして、彼が残留を望んでいたにもかかわらず放出された選手たちの存在など、今季開幕から自身がどのような状況に置かれ、なぜ自分の仕事を全うすることができないのかが記されていた。(『レキップ』)
バイヨンヌは昨夏、パタとの契約を2028年まで延長したばかりだ。クラブをチャンピオンズカップへ導き、トップ14準決勝に再び導いたパタの人気はサポーターに強く、延長を願う声がクラブに多く寄せられた。のちにタイエブ会長とパタが口論している時に「お前の契約を延長してやったのは、世間の声があったからだ!」と会長が口にしていたと伝えられている。
『シュッド・ウエスト』紙によると、契約の早期解約に関してクラブとパタの弁護士間で協議が始まっていたところ、2月18日にクラブからパタに「2月分の給与は支払うから自宅にいるように」と電話があった。つまり、もう練習に来なくてもよいということだ。
昨夏、ロラン・トラヴェールがディレクター・オブ・ラグビーに就任した。バイヨンヌをさらに強いチームに作り上げるためには、カストル、そしてラシン92をトップ14優勝に導いたトラヴェールの経験が必要だとタイエブ会長は考えた。しかし、パタとトラヴェールが協働することはなかった。
2月19日、クラブは公式声明を発表。グレゴリー・パタHCと双方合意の上で同日付での協力関係終了を決定した。チームの立て直しはラグビー部門責任者のジェラール・フレーザーに託されることとなった。バイヨンヌは現在12位。次節、2月28日のクレルモン戦でチームがどのようなリアクションを見せるか注目される。
クレルモンは先週末(2月14日)トゥーロンに乗り込み、今季無敗を守っていたスタッド・マヨールを陥落させた(34-14)。クレルモンがこの地で勝利を挙げたのは15年ぶりだ。
この試合に焦点を当てて周到に準備していた。今季、ブルーズから加入したSOハリー・プラマーが、パスで、ランで、トゥーロンのディフェンスを翻弄した。2024年11月に契約を結んでから、クレルモンの試合の映像を見ながらチームのプレーを覚え、フランス語を学び、万全を期してチームに合流し、開幕後メキメキと頭角を表した。すでにこのチームのボスである。クレルモンはカミーユ・ロペスを失って以来、待ち望んでいた司令塔を得た。順位もこの勝利で8位から5位に浮上した。
一方、敗れて6位から8位に落ちたトゥーロンのピエール・ミニョニHCは試合後の会見で、「ホームとアウェーで見せてきたこれまでの不安定さを考えれば、こうなることは目に見えていた。誰も死にたがっていない。天国へ行くには死ぬ必要があるというのに、今のチームにはそれをする者がいない。少なくとも、この試合に関してはそうだった。なされるべき努力がなされていない。口では威勢のいいことを言うが、実行が伴っていない。クレルモンに立ち向かおうという気概が感じられなかった。あまりにも多くのタックルをミスしすぎた。『共に死ぬ』という連帯感がないのだ」とチームの状態を嘆き、「第一の責任は私にある。いま一度自らの責任を全うするつもりだ。自分に48時間の猶予を与え、進むべき道を決める」と言葉を終えた。
ただ、48時間を過ぎた時点で動きはない。

モンペリエも敵地ラ・ロシェルで勝利を挙げた(43-33)。モンペリエのFWがスクラム、モールでラ・ロシェルに上回り、SOドミンゴ・ミオティはショットを10本中9本成功、自らトライも決めた。
ミオティはハンドリングも冴え、守備でも献身的。前半終了直前、ラ・ロシェルがゴール目前まで迫った場面でインターセプトによってチームを救った。残り15分にも再びインターセプトからキックで敵陣深くまで押し込み、勝利を決定づけた。
モンペリエは安定したセットピースと固いディフェンスをベースに堅実なチームが出来上がってきている。徐々に順位を上げており、現在、トゥールーズ、ポー、ボルドーに次いで4位につけている。BKは若いフランス人選手をそれぞれ代表チームの経験がある、スコットランド代表SHアリ・プライス、アルゼンチン代表SOミオティ、オーストラリア代表FBトム・バンクスがサポートしている。特にバンクスの貢献度は高く、ここまでトップ14の全17試合に80分フル出場し続けている。その鉄人ぶりはリーグ全選手の中でも彼ひとりだ。
ラ・ロシェルは、NO8グレゴリー・アルドリットが文字通り身を粉にして80分間ハードワークし続け、負傷していたSHノラン・ルガレックも後半から出場して戦列復帰を果たした。FLポール・ブドゥアンが残り時間10分で2トライを奪ったが、それでも勝利を掴むことができず、チャンピオンズカップも合わせると5連敗となった。
キャプテンのアルドリットは試合後の会見で「ラ・ロシェルは、もはや強豪ではなくアウトサイダーのチームになってしまった。今の僕たちに必要なのは、その立場を受け入れること。ロナン(オガーラHC)が言っていたように、トップ6がどうだとか、プレーオフ進出がどうだとか、そういったプレッシャーから自分たちを解き放つことではないか。いまはただ、毎週末の試合で自分たちの最高の姿を見せられるよう、全力を尽くすだけ」と語った。