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【Just TALK】Bチームが、Aチームを押して火をつけてくれたらしめたもの。長谷川慎[静岡ブルーレヴズ アシスタントコーチ]
ラインアウト、モールの強化を担当しつつ、選手の声やスクラム担当の田村義和アシスタントコーチの考えからヒントを得て、自身の知見を増やす。(撮影/松本かおり)
2026.02.13
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【Just TALK】Bチームが、Aチームを押して火をつけてくれたらしめたもの。長谷川慎[静岡ブルーレヴズ アシスタントコーチ]

向 風見也

 ジャパンラグビーリーグワン1部の静岡ブルーレヴズでフォワードを鍛える長谷川慎アシスタントコーチが、2月12日、取材に応じた。

 2006年度限りで現東京サントリーサンゴリアスでの現役生活を終え、翌シーズンから同部でコーチとなった。2011年度からは、いまの所属先の前身であるヤマハ発動機ジュビロで教え始める。

 新天地へ訪れる直前のフランスでの留学経験をベースに、フォワード8人が低くまとまるスクラムのシステムを構築。それを、その時々に共闘した選手らと日ごとにアップデートしてきた。

 2016年からの約8年間は日本代表のスクラム強化に従事し、19年のワールドカップ日本大会では史上初の大会8強入り。2023年の同フランス大会後、しばらく直接指導から離れていたブルーレヴズへ再入閣した。

 自身がコーチングをしていた頃のジャパンで強化委員長をしていた藤井雄一郎監督のもと、接点、ラインアウト、スクラムを教える。

 昨季はレギュラーシーズンの1、2位になった東芝ブレイブルーパス東京、埼玉パナソニックワイルドナイツを破った。結果、リーグワン発足後初のプレーオフ進出を達成する。今季は第7節まで3勝4敗で12チーム中6位。最初の話題はこの現状についてからだ。

1972年3月31日生まれ、53歳。京都・東山→中大。サントリー時代の1999年、2003年にワールドカップに出場(日本代表キャップ40)。サントリー、ヤマハ発動機(現・静岡ブルーレヴズ)でコーチ経験を積み、2016年から日本代表のアシスタントコーチに。2023-24シーズンから静岡ブルーレヴズのアシスタントコーチ。(撮影/向 風見也)


「難しい。できているところはできている。できていないところの改善を早くしなくちゃいけない。それが正直な感想かな。いまは点数を取られすぎている(1部ワースト4位の239失点/2チームが第7節未消化のため暫定=以下同)。それを(防御とは違う)他の分野のコーチが(問題を)シェアして、助けられないかを考えているところ。ディフェンスをアタックやセットプレーで助ける、補えるところは補う…。

…簡単には言えないね。これが問題、これがうまくいっているといったものも、試合によって変わってくるし。やるべきはそれを予測して、毎回、毎回、ちゃんと準備することなのだけど、今年はそれが不完全かな。でも、まだ、リカバリーはできる」

——担当エリアのひとつのラインアウトはいかがですか。決して上位陣にあって長身揃いとは言えないなか、2メートル級の並ぶ相手を向こうに一定の獲得率を示しています(データ会社Optaによれば1部5位の87.4パーセント)。

「スローワーのミスは減った。ただ、雨の日、風の強い日のプランB、Cを持っておかないと。それが選手と俺とのレビューかな。(強風が吹く拠点の)ヤマハスタジアムを経験しているので風に関しては言い訳できないけど、雨は…降らないのよね。ここ(練習場のある磐田市近辺)は日本で一番、日照時間が長い。(試合日に)雨の予報が出たら、(ボールを)水に濡らしてやらなくちゃいけないかな…とも考えている。

 ただ、選手もコーチも次の段階に(来ている)。選手がだいぶ(好タイミングで捕球するための)いいプランを立ててくれているし、いい練習ができている。

 そういう(前向きな)ところはたくさんあるけど、できていないところに関しては『それ』が(そもそも)いままでちゃんとできていたのかなどを検証し、できるようにしていく。これが、チーム力を上げるということ。このままでは終わらせたくない」

——ここからは、プレシーズンの取り組みについて聞きます。今夏、若手フォワードによるキャンプを大阪で実施しました。底力をつけるべく、複数のチームを回ってスクラムを組み込んだとか。

「去年、試合に出られなかったり、新しく入ってきたりした選手、あとは若い外国人と過ごす時間がほしい。シーズンに入るとどうしてもメンバー(主力)中心の練習になり、それ以外に目がいかない。次のシーズンにまたそういう目で見なくてはいけないというのが嫌で、随分前から(場所を変えながら)やっています。必要な時間です。

 何日間かを一緒に過ごし、スクラムだけをちゃんと見て、プレビュー、レビューをしながら課題を消してゆく。こちらにとっても、その選手の課題や考えていることを知るいい機会になる。向こうにとっても、話をすることで(指針が)明確になるんじゃないかな。

 もうひとつ、『あとから練習に参加してくる前年度のAメンバーに勝つよ』という意思表示をする。去年のBメンバーが、戻ってきた(若手より遅れて合流した)Aメンバーを(スクラム練習で)押すのが目標です。そうしたらAメンバーも火がついて、すぐに(状態が)戻ってくる…。こうしてチームは強くなる」

——右プロップでは実質1年目の稲場巧選手が台頭した結果、ベテランの伊藤平一郎選手も盛り返しているような。

「稲場はスクラム合宿の時点では課題もあって、身体もいまほどはがちっとしていなかった。いろんな話をしながら、やっとここまで来た。(組む瞬間の)駆け引きのところで強すぎるところがあった。『お前 1人が勝ってもしょうがない。8人で勝ちましょう』と。

 それから強すぎるとね、がたがた言われるのよ。『内(側)に入っている』、『落としている』とか。それには、『気にするな。そう言われるということは、向こうがビビっているからだ。ただ、それを(反則と)取られた時にどうするかのプランBは持っておかないといけない』と。(勢い余っての転倒などで笛を吹かれないためにも)80パーセント(の力)で組めるように。若い選手は、全部100パーセントで行く。その辺に対しての駆け引き、経験は、おじさんのほうがわかっている。それを教えるのが大事。

 まだ見えていないだけで、稲場には他にも直すところはある。でも、この先、本当にずっと出続けて、南アフリカ代表のオックス・ンチェみたいに『小さいのにスクラムがめっちゃ強い!』となってほしいな(ンチェは身長176センチで稲葉は175センチ)」

チーム内の競争がレヴズのスクラムを強くしている。(撮影/松本かおり)


——右プロップでは、長崎南山高校から大学を経ずに入った本山佳龍選手がいます。静岡産業大学に通いながらプロ生活を送る19歳です。

「あんな大学1年生いないよ。根性あるし。スクラムも今年1年で伸びた。大阪(での若手キャンプ)では全く組めていなかったけど、いまはすごくよくなっている。押される理由はフィジカルだけ。組み方はきれい。

 もうちょっと背中や身体が大きくなり、いろんな衝撃に耐えられるようになったら、試合に出てくるんじゃないかな。この前、フッカーのシアレ・マヒナ(20歳)が歴代6位の年少デビュー。あいつはそれが悔しかったみたいで、(早いうちに)出たらその記録を抜けるらしい。『絶対、出る!』って。

 大学2年生の年のフロントローがリーグワンに出るとしたら、まぁまぁ早い。ただ怪我をしてはかわいそうなので、段階を踏んで出してあげたい気持ちもある。だから(育成に)時間をかけたけど、思ったよりも早くここまで来た。頑張れるセンスもある。いろんな話をするなか、いいと思ったこと(トレーニング)はやりよるし。(助言が)聞きっぱなしにならないから、こちらにも責任が生じる。

 頑張れるセンスがあるのは、稲場も一緒。それがある選手が、そういうところ(高いレベル)にきているのかなと。日野(剛志=フッカー)であり、平一であり…(それぞれ長らく主力として活躍)。

 あとはショーン・ヴェーテー(右プロップ)、作田(駿介=2年目のフッカー)とか。それからダニエル(・マイアヴァ)も(伸びた)」

——マイアヴァ選手は22歳。身長194センチ、体重116キロのサイズで身体能力の高さと勤勉さを持ち味とし、第6節でデビューするや躍動しました。

「いい選手ね。スピードはあるし、タックルには行くし、謙虚だし、ハンドリングはいいし、スクラムも真面目にやる。最初(大阪合宿時)は、練習生だったのかな。その時から頭いいなぁと。ミーティングなどでコミュニケーションを取っていると、ちゃんと自分を持って、変えようとして、チームになじもうとしていた。『あの子、いいよ。採り!』ってなった。西内(勇人/採用担当)は優秀。よく見つけてきたなぁ…と。リクルートって、大事。

 名前を挙げたらきりがない。中山律希もだいぶ、よくなった(左プロップ)。もともとフィールドがよく、フィットネスもある。もうちょっと時間をかけてやったら、もっとよくなる。(スクラムで)コツは掴んだ。だいぶ、はまり始めている。ただ、『こうなったらどうする?』、『いまの組み方が通じないならどこに気をつけるか?』がもう少しわかってくると、ミスしなくなる。…ただ、よくここまで来たなと。根性がある。投げ出さなかったね」

 前年度のプレーオフ準々決勝では、リーグ戦では2回勝ったコベルコ神戸スティーラーズに敗れた。スクラムでの優勢が勝利に直結していたが、一発勝負の場では相手方の技巧に泣いた。同じ轍を踏まないように、いまを過ごす。

 2月7日の第7節でスティーラーズと再戦。兵庫・神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で45-60と敗れるも、スクラムでは好プッシュを披露できた。

「悪くはなっていない」

普段から選手を盛り上げるアプローチを欠かさない。(撮影/松本かおり)


 そういえば昨年8月。
 自身の「X」のアカウントが乗っ取られて「アルツハイマーが進行し、医師からはあと数か月と告げられました」などと虚偽情報が書き込まれた。クラブも「事実と異なる」と発信したこの件について、あらためて当事者が話す。

「ある時、ログインできなくなったの。もともと毎日コミュニケーションツールとして(SNSを)使うほうじゃなかったから1か月半くらい適当にしていたら、急に、あんなことになって。

 その日、京都のお米屋さんの創立記念パーティに行っていた。舞台が暗転して社長が喋っている時、俺の携帯がピカピカ光ってさ。その場では返信もできないじゃない? どうしようと思っていたら、流(大=東京サントリーサンゴリアス所属/日本代表で選手、コーチの間柄だった)が『(SNSで)嘘って言っておきましょうか?』と。

 俺のことを知っている人には『こんなところで、発表しないよね』と気づく人もいた。そんななか、(ジュビロで指導した左プロップの)山本幸輝は『こいつ、いい奴だな』と思えるようなLINEをくれた。あいつが神戸(スティーラーズ)に移ってからあまり喋ることはなかったのに」

 名伯楽を擁するブルーレヴズは、2月14日、ヤマハスタジアムでクボタスピアーズ船橋・東京ベイとぶつかる。

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