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【from NZ】プレシーズンマッチの魅力。地方開催で盛り上がる。クルセイダーズ×ハイランダーズ
激しいボールキャリーで再三前に出たイーサン・ブラッカダー。(撮影/松尾智規、以下同)

【from NZ】プレシーズンマッチの魅力。地方開催で盛り上がる。クルセイダーズ×ハイランダーズ

松尾智規

◆プレシーズンマッチが熱い!


 ニュージーランド(以下、NZ)では、依然としてオールブラックスのヘッドコーチ(以下、HC)問題がくすぶっている。
 その中でスーパーラグビー2026の開幕が間近に迫っている。開幕は2月13日、残り2週間を切った。

 国内のスポーツシーンでは、夏のNZを代表するクリケット、そして昨年に引き続き元日本代表DF、酒井宏樹がキャプテンを務めるオークランドFCのサッカーが盛り上がっている。
 ラグビーモードも、じわじわと高まってきた。

 1月30日、31日の2日間、各チームがプレシーズンマッチに突入した。2年前は9位に沈みながら、昨季は見事な復活で王者に返り咲いたクルセイダーズも、ハイランダーズを迎えて1月30日に試合をおこなった。現場の臨場感を交えた試合レポートをお届けしたい。

 試合会場となったティマル(Timaru)は、クルセイダーズの本拠地クライストチャーチから車で約2時間、ハイランダーズの本拠地ダニーデンからは約2時間半と、両都市のほぼ中間に位置する地方都市だ。人口は2万7000人前後。試合は、Fraser Park(フレイザー・パーク)でおこなわれた。

終始FW戦で有利に戦ったクルセイダーズ


 このティマルには、ラグビーの盛んな高校として知られるティマル・ボーイズ・ハイスクールがあり、クルセイダーズのFL/NO8、カレン・グレースのほか、日本代表のLO/FL/NO8ファカタヴァ アマト(リコーブラックラムズ東京/双子の兄で同チーム所属のファカタヴァ タラウ侍も)も卒業生である。

 スーパーラグビーの公式戦ではスタジアムまで足を運ぶことが難しいティマルの住民たちも、この日は会場に集い、チケットは完売。約4500人の観客とともに、地方開催ならではの熱気を作り上げていた。金曜日の午後3時半のキックオフにもかかわらず、観客がピッチをぐるりと囲んでいた。

◆クルセイダーズの充実が目立つ。



 試合は20分×4本でおこなわれた。途中の20分のブレイクはウォーターブレイク程度で短め。なるべくシーズンと同じ感覚を意識する様子が見られた。
 序盤から勢いを見せたクルセイダーズは30分ほどまでに4連続トライを決め、コンバージョンもすべて成功。ハイランダーズを前半終了間際の1トライに抑え、28-5で折り返した。

 後半は両軍ともメンバーを大幅に入れ替え、風上となったハイランダーズが少し挽回する場面が見られた。
 しかしプレシーズンマッチ初戦ながら、コンビネーションも良かったクルセイダーズのペースで試合は進む。最終スコアは33-10。トライ数はクルセイダーズ5、ハイランダーズ2でクルセイダーズが勝利した。

 プレシーズンマッチ初戦とあり、現オールブラックスの選手たちは出場していない中、圧勝したクルセイダーズでは、ゲームキャプテンのFLイーサン・ブラッカダーがブラインドサイドFL(6番)の位置で随所に力強い突進を見せ、再三前に出てチームを勢いに乗せた。

【写真左上】クルセイダーズのチェイ・フィハキ。【写真右上】良いパフォーマンスを出したクルセイダーズのSO10番タハ・ケマラ。【写真左下】ハイランダーズに新加入のアルゼンチン代表、LOトマス・ラバニーニ。【写真右下】若手が活躍したクルセイダーズ。8番のジョニー・リーもその中の一人


 この日のブラッカダーのプレーを見ていると、ポジションがなかなか定まらないオールブラックスの6番の悩みを解消してくれると思わせるほどのパフォーマンスだった。FW陣もこれに続く奮闘でハイランダーズに隙を与えなかった。

 BK陣では、キャップホルダーのCTBブレイドン・エノーやWTB/FBチェイ・フィハキのレギュラークラスたちが格の違いを示すプレーを披露した。加えて目を引いたのは、10番の司令塔で、昨季開花したタハ・ケマラが先発で前半40分をプレー。昨年の前十字靭帯断裂の影響を感じさせず、安定したパフォーマンスを披露した。
 後半からはリヴェス・ライハナが10番に入り、軽快な動きでゲームをコントロールしていた。

 クルセイダーズは、若手選手らの活躍も印象的だった。
 中でも目を引いたのは、昨年のU20ニュージーランド代表のキャプテン、HOマヌマウア・レティウ。ドライビングモールから2トライを決めた。FLオリ・マティス、NO8ジョニー・リー、12番トビー・ベルなども見せ場を作った。ワイダートレーニングスコッドを含む若手選手たちがステップアップし、シーズンが楽しみになる内容だった。

 ハイランダーズはクルセイダーズのプレッシャーを受け、良いところを探すのがなかなか難しい展開だった。試合の入りからFWが劣勢にまわり、モールのディフェンスに苦労した。簡単にトライを奪われるシーンが何度かあったことも気になる。BKでもディフェンスを破られる場面があり、常に劣勢に立たされていた印象だ。
 後半は、風上でやや挽回したものの、試合を通じてエラーレートも高かった印象だ。

スクラムが優勢だったクルセイダーズが試合も制した


 今季加入のアルゼンチン代表LOトマス・ラバニーニは、身体を張ったプレーを見せディフェンスで奮闘したが、夏のNZの気候に慣れていないせいか、後半はフィットネス面で苦戦しているように見えた。

 その劣勢の中でもWTBケイレブ・タンギタウは2トライを挙げるなどスピードもあり、健在ぶりを示した。前半は15番、後半はWTBの位置に入ったスタンリー・ソロモンも、ハイボールの強さや積極的なランでアピールしたのは明るい材料だ。

 2週間後に同じカードでダニーデンにて開幕を迎える時には、オールブラックスの選手が出場してくることが予想される。より競った試合になることが期待される。

◆プレシーズンならではの光景。


 オールブラックスのHC騒動で揺れる中、次期HC有力候補のジェイミー・ジョセフ(ハイランダーズのHC)は試合後すぐ、メディアに囲まれる前に引き上げていった。しかし会場に駆け付けた観客はピッチに入る事を許され、選手とファンが直接触れ合う光景が広がった。

 試合に出場していないオールブラックスの選手も一般席の一部に陣取ってファンのすぐ近くで試合を観戦。そのスター選手たちが試合後はピッチに降りていくと、子どもたちはお気に入りの選手をめがけて一目散に駆け寄り、サインや写真撮影をねだっていた。

【写真上】試合に出ていなくてもウィル・ジョーダンは一番人気。【写真左下】人気者のリヴェス・ライハナ。【写真右下】昨年代表デビューのファビアン・ホランドにもファンが駆け寄った


 WTB/FBウィル・ジョーダンにはあっという間に人だかりができ、SOリヴェス・ライハナには子どもたちだけでなく女性ファンも集まった。
 各選手が一人ひとりに丁寧に応じる姿は、笑顔にあふれ、地方開催ならでは。アットホームな雰囲気を感じさせた。

 プレシーズンマッチの魅力は、何より選手とファンの距離の近さだ。クルセイダーズにおいては、シーズン中でも試合後にピッチに降りられることも多いが、プレシーズンマッチはより自由で、選手とファンの交流が間近に見られる特別な時間が約束される。

 子どもたちの輝いた瞳を見ると、かつて選手自身も憧れたように、将来の夢が育まれる瞬間を間近に感じられる。
 ラグビーシーズン開幕目前。ティマルの会場には、熱気と期待に満ちた良い空気が流れていた。




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